中学生の不登校の主な理由と生徒数
文部科学省が平成28年10月27日に発表した「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査(速報値)」によると、平成27年度の全国の中学生348万1839人のうち、病気や経済的な理由を含む長期欠席者は13万1844人、不登校の生徒は9万8428人にのぼります。小学生約654万人のうち不登校児童数2万7581人に比べると、著しく増加しています。福岡県内は中学校の生徒数14万1246人に対して不登校生徒数6007人、34人に1人、1クラスに1人が学校へ行けない状況になっています。
学年別にみると、小学6年生の不登校児童約9000人に対し、中学1年生は2倍以上の2万4800人に増えています。これは一般に「中1ギャップ」と呼ばている急激な学校環境の変化が主な要因です。また中学2年生は約3万6000人、受験が目前に迫った3年生は3万7000人、増加していることが分かります。学校が楽しさや意味を感じない無気力の傾向や色々な不安を抱えている生徒が不登校全体の60%以上占め、友人関係が主な理由の生徒は全体の28%になります。
小学校と違い中学校は同じ集団教育でも、自分のしたいことと学校や家でさせられることのギャップが大きくなったと感じるお子様が多数います。その中で問題なくスムーズに学校生活を送る備えを日々することが最善ですが、勉強と部活や趣味との両立、複雑になる友人との関係、親子や兄弟の関係、自立を求められる時期などが重なり、疲労が溜まっていくことが考えられます。
中学生の不登校の理由1
中学生の主な不登校の理由を大別すると、不登校の生徒数に対して、無気力による不登校が約31%・不安の傾向による不登校が約30%・人間関係の問題による不登校が約18%・あそびや非行による不登校が約8%になります。詳細をみると、友人などとの人間関係の問題と友人関係からくる不安傾向が不登校全体の約22%を占め、次いで学業不振からくる無気力が不登校全体の約10%いることが分かります。
中学生の不登校理由1平成27年度不登校数98428人
理由1
人数
比率
人間関係
17775
18.06%
いじめ
362
0.37%
いじめ以外の友人関係
12823
13.03%
先生との関係等
962
0.98%
学業不振
2147
2.18%
進路に係る不安
462
0.47%
部活等の不適応
1031
1.05%
学校のきまり等をめぐる問題
367
0.37%
入学転編入進級時の不適応
1230
1.25%
家庭に係る問題
2380
2.42%
無気力
30134
30.62%
いじめ
34
0.03%
いじめ以外の友人関係
4009
4.07%
先生との関係等
383
0.39%
学業不振
9417
9.57%
進路に係る不安
1404
1.43%
部活等の不適応
663
0.67%
学校のきまり等をめぐる問題
1136
1.15%
入学転編入進級時の不適応
1827
1.86%
家庭に係る問題
11431
11.61%
不安の傾向
29262
29.73%
いじめ
71
0.07%
いじめ以外の友人関係
8674
8.81%
先生との関係等
464
0.47%
学業不振
5964
6.06%
進路に係る不安
2237
2.27%
部活等の不適応
830
0.84%
学校のきまり等をめぐる問題
494
0.50%
入学転編入進級時の不適応
3088
3.14%
家庭に係る問題
8146
8.28%
あそび非行
7503
7.62%
学校に係る問題
5921
6.02%
家庭に係る問題
2988
3.04%
その他の理由
13754
13.97%
※上記表は不登校の理由が複数ある場合、主な理由を1つ取り上げています。
※上記表の「学校に係る理由」と「家庭に係る理由」の人数は重複している生徒を含みます。
平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(速報値)について文部科学省初等中等教育局児童生徒課
中学生の不登校の理由2
中学生の不登校の理由を「学校に係る理由」と「家庭に係る理由」に分けると、学校に係る理由が7万1120人・家庭に係る理由の不登校は3万1540人になります(学校と家庭、両方の重複を含む)。下記のグラフを見ると、「いじめ以外の友人関係」が主な理由の生徒は約28%、「学業不振」が主な理由の生徒は約21%、不登校の生徒の約半数が友人関係または勉強が理由で学校に行けなくなっています。
学業の負担は学習環境を整えることや学校の協力で解決の目途が立ちやすいと思います。しかし、友人関係は周囲との価値観に隔たりが有り過ぎたり、複雑な人間関係や興味のなり話題・気遣いに疲れてしまっているケースも多くあります。スムーズな友人関係を保つことは、思春期のお子様にとって必要不可欠であると言えます。友人関係に疑問や不安があり、蓄積すると、何らかのきっかけで繊細な心の内側を刺激して、学校に行けなくしていると考えられます。不登校になっているなっていないは別として、多くのお子様が友人関係などを気にする多感な時期です。心と体のバランスが保てるよう、気持ちの持ち方や思考の方法など、普段からお子様の個性を尊重して何気なく諭していくことも大切です。
中学生の不登校理由2平成27年度不登校数98428人
理由2
人数
比率
学校に係る問題
71120
71120
いじめ
502
0.51%
いじめ以外の友人関係
27546
27.99%
先生との関係等
2177
2.21%
学業不振
21098
21.43%
進路に係る不安
4730
4.81%
部活等の不適応
2823
2.87%
学校のきまり等をめぐる問題
4938
5.02%
入学転編入進級時の不適応
7306
7.42%
家庭に係る問題
31540
31540
※上記表は不登校の理由が複数ある場合、主な理由を1つ取り上げています。
※上記表の「学校に係る理由」と「家庭に係る理由」の人数は重複している生徒を含みます。
平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(速報値)について文部科学省初等中等教育局児童生徒課
全国中学生の不登校生徒数
全国の中学生の生徒数は減少しているのに対して、平成24年度まで減少していた不登校の生徒数はそれ以降、毎年約1500人単位で増えている状況です。小学校まで問題なく成績優秀だったお子様がある日突然学校へ行きたがらなくなった、誰にも相談せずに心の負担を蓄積して気づいたときは遅かった、注意すると反抗するなど、家庭教師をしていると色々な相談があります。実際にお子様とお会いしてみると、表面上は問題なく素直で良い子なのも事実です。理由はさまざまですが、何か学校で嫌なことがあり、それを克服する方法や心の在り方を分からない、学校へ行く目的が見つからないというケースが多く見受けられます。これだけ多くの生徒が学校へ行けないという事実は、以前の中学校と今の中学校は内容が違うと思った方が良いかもしれません。それを受け入れたうえで、解決する方法を検討していきましょう。どの子にも解決する糸口があり、その環境と機会を学校と連携しながら作ることが学校復帰の近道だと思われます。
福岡県の中学生の不登校数
平成27年度の中学生の長期欠席生徒数は、全国で13万1844人にのぼります。そのうち福岡県内の長期欠席者は6007人、病気や経済的な理由を除く不登校の生徒は約70%の4229人になります。34人に1人、1クラスに約1人が何らかの理由で学校へ行けない状況におかれています。不登校という言葉を良く耳にするようになり、無理に学校へ行くことや人と同じことをすることがすべてではないかもしれません。しかし、安易な気持ちで卒業後の進路を選ぶとまた同じ状況になるケースがあります。現在引きこもりの状況を解決する手段として、教室に入れない場合、中学校内の特別教室や外部の適応指導教室なども利用しながら、お子様に合った高校選びをすることも重要になります。またその働きかけを普段から少しずつしていくことが大切です。
全国中学生の学年別不登校数
小学6年生の不登校生徒数が約9000人だったのに対し、中学1年生の不登校生徒数は2万4000人以上に急増します。小学校と中学校の環境の違い、小学校から引きずっている要因などから起こる中1ギャップと呼ばれるものです。中学入学後の環境の変化に馴染めず、さまざまな理由で心身ともに疲れてしまったり、逃避しようしたり、体調が悪くなってしまったりするケースが多く見受けられます。また中1で大丈夫だったお子様でも、中2または中3で学校に行かなくなるケースがグラフのように、多数あります。また学校へは通えていても学業不振や不安の傾向にある生徒は、さらに倍以上いるものと思われます。できる限り早い段階での解決が望ましいですが、すべてが思い通りに進むとは限りません。休んでいる間に起こる依存症や無気力、不安感など二次的な要因も含んでいるお子様の場合、焦らず計画的に学校復帰や進学のためのプロセスを踏むことが重要になります。